当財団では、山紫水明の自然豊かな日本の原風景を守るため環境保全事業を行います。急峻な山々を縫って流れる河川を有効に利用する方法を模索するとともに、その流域で行われる農林業においても自然に適う方法論を確立していきたいと考えています。また、若者たちに農林業を体験してもらうことにより、我々が育まれているこの素晴らしい国土を見直す機会にしていただきたいと心より願っています。

 2022年秋から、京都市の西に位置する亀岡の地で約千平米の河川沿いの耕作放棄地をお借りし、実験的に畑に戻す取り組みを行っています。もともと田んぼだった土地に笹が生い茂り、地中には笹の根っこが縦横無尽に絡み合っている状態でした。可能な範囲で根を掘り起こし除去した後、粘土質の土壌を改良するために腐葉土や亀岡の農業組合で頂いた大量のもみ殻などをすき込みました。大変な労力を要する試みでしたが、志を同じくする仲間のおかげにより畑と呼べる状態まで復帰させることができました。

 できあがった畑では除草剤や農薬は使用せず、できるだけ有機肥料を用いる自然栽培をしています。環境に負荷をかけることなく、如何に自給できる農業にしていくかも今後の課題です。畑の一角に池を作ると自然とアカハライモリやカエルが住み着き、放流したメダカが繁殖する様子に心和みました。身体を使う心地よい労働、そしてお腹も心も満たされる地に足がついた経験ができる素敵な場所になったなとつくづく感じます。

 畑の活動をしていくと様々なエネルギー源が必要となってきます。組み立てた休憩小屋の上には打ち捨てられていたソーラーパネルを張ることで冷蔵庫を稼働させることができましたし、刈払機などの電動農具を動かすバッテリーを充電できるようにもなりました。そもそもエネルギーと環境保全は切っても切れない関係にあるのですが、可能な限り自然にダメージを与えない方法を考えていきたいものです。今後の目標としては、隣を流れる河川を利用してマイクロ水力発電をすることであり、亀岡市や地域の皆さんとも協力しながらその道筋を模索していきたいと考えています。有効性が確かめられるのであれば、ゆくゆくはひとつのモデルケースとしてご活用いただきたいと思っています。